今年は残暑が長く続き、急に秋が深まり寒くなりました。これから夏物衣料をクリーニングに出される方が多くおられるのではないかと思います。そこで今回は、ドライクリーニングについてのお話しです。
(1)そもそもドライクリーニングって何なんでしょうか?
(2)ドライクリーニングって普通の洗濯とどう違うのでしょうか?
(3)クリーニング屋さんではどのようにされているのでしょうか?
そんなところからお話しを進めて行こうと思います。
そもそもドライクリーニングって何なんでしょうか?
衣類は、天然繊維と化学繊維から作られています。
化学繊維は化学処理で人工的に作られる繊維の種類のことです。化学繊維は合成繊維と再生繊維に分けられ、合成繊維は耐水性に優れているので水でじゃぶじゃぶ洗えます。天然繊維は植物繊維と動物繊維に分けられます。植物繊維は耐水性があるのですが、動物繊維は水に弱く縮んだり伸びたりします。従って、動物繊維で作られた衣類の洗 濯には水が使えません。
これらの衣類は、水の代わりに溶剤を使って洗濯をします。これがドライクリーニングです。代表的な衣類では、ウール製品の上着・スカート・パンツ・コート類、絹製品のネクタイやスカーフなどがあります。また、デザイン性に優れた縫製の弱い衣類なども該当します。
ドライクリーニングって普通の洗濯とどう違うのでしょうか?
洗濯に溶剤を使用するので洗ったあとの液は川や下水に流せません。洗濯に使った液は、循環しながら濾過して何度も使用します。使用する溶剤は何種類かありましたが、環境や人体への影響を考えて現在は、ほとんどが石油系溶剤です。石油系溶剤って何なんでしょう?文字の通り皆さんがボイラーや暖房に使用する灯油とほぼ同じ成分です。
【石油系ドライクリーニング機】
【溶剤の流れ】
洗濯を開始すると、ポンプで溶剤がタンクからフィルターを通り洗濯層に貯められます。フィルターでゴミや汚れなどの固形物が濾過によって取り除かれ、次に活性炭で色素や脂肪酸や発臭物質を取り除いてから洗濯に使用されます。(循環洗い)洗濯時間は10分から20分前後です。洗濯を繰り返すと溶剤に汚れ成分や衣類からの染料などが蓄積し少しずつ色付いてきます。そのため、フィルターや活性炭は約300回ぐらいの洗濯で交換します。
【ドライクリーニングの弱点】
水で洗濯する時に使用する洗剤の代わりに、溶剤での洗濯にはドライソープを使用します。衣類に付いている汚れの大半は食べこぼしや汗や垢などの水溶性の汚れなのですが、溶剤は油ですので水溶性の汚れは苦手です。その弱点を補うのが洗剤と柔軟剤の役目を果たすドライソープなのですが、循環洗いのため泡立ちなどを抑えなければならなく使用量が制限されてしまいます。そのようなことからドライクリーニングは水で洗うより洗浄力が劣ってしまいます。 また、灯油と同じく溶剤臭があるので乾燥後もしばらくは溶剤臭が残ります。
クリーニング屋さんではどのようにされているのでしょうか?
クリーニング屋さんでドライクリーニングされた衣料はどのような 過程で皆さまの手元に戻って来るのでしょうか?ドライクリーニングされた衣類はタンブラーで完全乾燥されます。その後、ハンガーアップしてコンベアーでトンネルフィニッシャーに通されシワを伸ばします。
次に、上着類は人体プレスで仕上げられます。
パンツはパンツトッパーで 仕上げられます。
最後はプロの手で細かいシワを伸ばし、型を整えて仕上りです。
今回は、ドライクリーニングについてお話しました。
次回は、クリーニングでのYシャツ洗いについての予定です。
<作成・編集>
アンボメー株式会社
クリーニング師・繊維製品品質管理士(TES)
芝田 豊治
<記事監修>
アンボメー株式会社
代表取締役 CEO
片岡 友美